一輪の桜

その短い文章の書き込みは、
「今日、とっても嬉しいことがあったんです。去年買った河津桜に花が咲いたんです。
まだ一輪だけですが…」という言葉で始まっていた。

あるインターネットの掲示板を見ていて、私は一人の女性からの心惹かれる書き込み文を見つけた。
その掲示板というのは、全国のもうすぐママになる人たち同士が自由に意見・情報交換できるような仕組みになっている。


Photo By Icchiy
その人は去年の二月、お腹に赤ちゃんがいたけれど、流産をしてしまったらしい。
その手に元気な子供を抱くこともなく、さぞかし辛い思いをしたことだろう。
その時、確かにお腹にその子がいたという証を残しておきたくて、この小さな桜の苗木を一本植えたとのこと。
“来年は花が咲くかどうかわからないよ…”と、買うときに言われたそうだけど。


そして、
「一年が経って、今日桜の花が咲いていて、なんと今日、また妊娠していることがわかったのです。」と。


流産してしまった子を思って植えた桜が初めて一輪だけ咲いてくれたその日に、新しい命の芽生えがわかるなんて…なんだか偶然とは思えない不思議な力を感じずにはいられない。
去年の赤ちゃんはどこかに生きていた! 
ずっとメソメソしていたママのことを、いつもどこかで見守っていてくれていた!
きっと去年の赤ちゃんが、“またママのところに戻ってきたよ!”って、小さな桜の花の姿を借りて、一所懸命 教えてくれたのかもしれない。

Photo By Icchiy
――今、私のお腹の中にも小さな生命が宿っている。
まだまだ虫けらのような子だけれど、心臓をピクピクと精一杯に動かして生きている。
この世に命が降りてきて、この世に命が息づいている。
どれほどめぐり遭いたくてその誕生を望んでも、どんなに遠くへ逝かないでほしいと別れを嘆いても、命のもつ運命は、きっと永遠に はかり知れない。

命って不思議。なんて神秘的。
ふと そんなことを思わされた、今日は暖かい春の日…。

Photo By Pal-mama
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